介護は儲かりすぎだ!
という謎の統計データを元に、平成27年4月の介護報酬はマイナス改定となりました。
(お国って、結論ありきの統計データを作りますからねぇ・・・)
介護サービス種別に利益データが出されていたのですが、まぁ、知り合いで、そんな財務データを提出した介護企業は見たことがありません(汗)
その中で、今回、特に目の敵にされたのは、デイサービスですね。
介護サービス種別の利益データが、「どのようなデータ」を元に作成されたのかわかりませんが、入居施設(特養、GH、介護付き有料老人ホームなど)と、通所施設では、ある大きな違いがあります。
それは、入居施設は「家賃等」の別途徴収が可能ということです。
当たり前のようですが、これ、当たり前ではありません。
(先日、意見交換をしていて強く思いましたが、一般の方は、介護報酬であちこちの介護施設の建物が建っていると思われています。)
入居施設の売上構成は大きく分けると、家賃等収入と介護収入に分かれます。
それに対して、通所施設は、介護収入のみです。
すなわち、
入居施設は、土地・建物の代金を、家賃等収入から支払うことができますが、通所施設は、土地・建物の代金を、介護収入から支払わなければならない。
ということですね。
これ、すっごい違いなのですよ。ほんと。
(購入ベースの話ですが、リースバック等の賃貸ベースも結局は同じことです。)
それに対して、デイサービスは利益率が高い!と言われてもなぁ・・・と思うわけですね。
さてさて、本題ですが、
介護事業が「儲かっている」という根拠の一つに、税金を使って福祉を行っているのに、介護事業の経営者が外車に乗っているなんてけしからん!
という話があります。
だから、介護報酬を下げても大丈夫!という心情になりがちなのですね。
これ、医療の中心を担う医師全体にも言えるのですが、なぜか、こちらはあまり指摘されません(笑)
社会福祉法人に関しては、内部留保金については槍玉に上げられますが、理事長が外車に乗っているとか、理事長年収は最大2,000万円までOKとかいう話はあまり指摘されません(笑笑)
さてさて、介護事業の経営者が外車に・・・という話ですが、皆さんはどのように考えますでしょうか?
何点か、考え方を記載してみたいと思います。
1.例えば、社長が1,000万円の高級外車に乗っているとします。
それに対して、「けしからん!社員の給与にまわすべし!」という意見があったとします。
では、この車は会社の経費で、5年リースをしているとしますね。
すると、1年あたりのリース料の支払いは大雑把に200万円となります。
1ヶ月あたりのリース料は、16万7千円くらいとなります。
この会社が社員が200人の会社だったとすると、仮にこのリース料をすべて社員に還元したとしても、1人あたりわずか月額833円にしかなりません。
実はその程度ということでもあります。
2.例えば、介護業界に夢を持って、会社に入ってきた青年がいます。
その会社を選んだのは、成長著しく、社長は外車に乗って、身なりもピシッとしています。
連れていってくれるお店は、きらびやかで、料理も美味しい。
ようし、俺も頑張って社長のようになるぞ!この会社で頑張るぞ!と思うとします。
これが、入った会社の社長が、15年オーバーのポンコツ軽自動車に乗っていて、小遣いもなく、ご飯に連れていってくれても、激安居酒屋だったりします。しかも割り勘です。
さて、この青年は、ようし、俺も頑張って社長のようになるぞ!この会社で頑張るぞ!と思うでしょうか?
介護業界に人は増えるでしょうか?
3.例えば、成長伸び盛りの会社で、社長の年収はどうやら自分の年収の10倍はあるらしい。かっこいい外車にも乗っている。
でも、聞くところによると、どんどん新規事業所をオープンしており、会社の借入金残高は10億円を軽く超えているらしい。まだまだ完済までに15年は必要とのこと。
しかも、社長は、その会社の借入金のすべてに連帯保証人になっているらしい。
(まぁ、日本では基本ですが。)
個人のお金も、数千万円は会社に入れているとのこと。
そのお金は個人としての借入で調達したもので、毎月、数十万円の返済を続けているとのこと。
さて、この青年に、今すぐ立場を入れ替わりますか?と聞いたらどう答えるでしょうか?
4.例えば、ある社長は会社を起こしてから、一心不乱に働き、役員報酬は生活ギリギリの最小限に留めながら、よい介護サービスを創ってきました。
介護報酬改定に左右されずに、職員が安心して働く職場を作るため、借入金の返済を第一に考え、必死に働いて、事業展開をしながらも、必死に返してきました。
創業から○年が経過し、借入金の返済は80%以上済み、自己資本比率の高い、安定した財務体質の会社となりました。
ようやく、その社長は役員報酬を人並みに上げるとともに、車もポンコツ軽自動車から、外車へと乗り換えることができました。
安定した財務体質のおかげで、介護報酬のマイナス改定も何てことはなく、職員も安心して仕事に取り組んでいます。
(3.と4.は、2.のアンチテーゼですね。)
ということで、回答にはなっていませんが、考えの参考になれば幸いです。
個人的には、頑張っているから外車ぐらい別にいいんじゃないの? と思いますが、世間様的には、あまり好まれてはいないようですね。
(厚生労働大臣も仰っていました。)
そして、介護報酬ダウンだ!という世論の流れに繋がっていくようです。
そもそも、介護業界が儲かるという話は、上場企業や、フランチャイズをしている会社が「儲かる!儲かる!」と言いつづけた結果であるわけです。
その結果、マイナス改定となり、介護大手の2016年3月期の決算予想は、軒並み大幅減益や赤字転落が並びます。
事業は一時的な結果ではなく、継続していかなければなりません。
晴れの日も、雨の日も、継続していかなければなりません。
介護事業の経営者の皆さま、
しっかり利益を出して、しっかり返済して、しっかり税金を払って、
そして、目立たない程度に贅沢を(笑)
老人介護を福祉から民間開放したのであれば、
頑張る人を応援する文化であってほしいな、と思うのです。
そして、頑張った人は、次なる人に夢を与え続けてほしいな、とも思うのです。
そうすることで、介護業界はもっと活性化すると思うのだけどなぁ。
2008年頃まではそうだったなぁ。
(平成27年11月25日)
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