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特別養護老人ホーム 愛寿荘
施設長
柳田 智世 さん |
「日本の福祉をどう支えていくかを考える重要な機会」
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介護保険開始から9年が経過し、介護施設の数が増えてきました。
これは、すなわち、介護が必要なお年寄りの数が増えたということです。
反対に、少子化により労働人口は減ってきています。
これは、お年寄りを支える人口が減ってきているということです。
すなわち、全体の労働人口が少ないことを意味しています。
介護の仕事は、汚い、きついなどというマスコミ報道ばかりがなされていますが、働いているスタッフ達は、皆、誇りを持って介護という仕事に取り組んでいます。
このような報道により、介護の仕事に対するイメージが悪くなることにより、介護の専門学校の入学者数が減少してきたり、卒業をしても介護の仕事を敬遠し、他の業種で働く人が増えてきたりしているという状況が起こってきているのです。
現在、介護業界では人材が不足してきています。
これは、どこの介護施設でも同じです。
各施設が、賃金や待遇をはじめ、様々な人材確保の取組みを行っていますが、個々の介護施設の努力にも限界があります。
どこかの介護施設の介護スタッフ数が充足すれば、すなわち、どこかの介護施設の介護スタッフ数が不足するという、施設間での人材の取り合いになってしまっては意味がありません。
介護の仕事はロボットではできません。
心と心が通う、人の介護であるからこそ、介護には意味があります。
不況に強いといわれる介護業界のため、他の業種から介護の仕事に移られる方も増えてきます。
しかし、介護施設側のきちんと指導ができる環境、育てる側の資質も大切です。
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日本の人口ピラミッドを見ると、今後は、介護の必要なお年寄りの数は増えていき、それを支える労働人口は減っていきます。
このままでは、労働人口の全員が介護の仕事に従事しても、間に合わない事態が訪れることになるかもしれません。
そのため、日本は、他国の介護労働力を活用しようという取組みをはじめました。
その第一弾として、平成20年5月よりEPA協定を結び、H20年8月からインドネシア人の介護福祉士候補者の受入が始まりました。
愛寿荘では、半年間の日本語研修を経て、H21年2月から受け入れを始めています。
初めての取組みですので、何をどうやっていけば良いのか、前例がないためわかりません。
また、受入にあたっては、受入施設側にも様々な覚悟が必要になってきます。
渡航費用、研修期間の委託料、マッチング手数料、家賃補助など、様々な経費が必要となります。
(渡航費用に関しては、3年後に介護福祉士が取得できずに帰国する際には、施設負担となる。)
綿密な研修計画と研修プログラムを作り、介護福祉士試験の合格を目指して、サポートしていかなければなりません。
研修者は介護スタッフとしてカウントされませんが、日本人と同等以上の給与を支払わなければなりません。
介護施設側の負担がかなり大きく、なかなか手を挙げにくい制度ですが、今後の日本の介護の未来を考えると、誰かが最初の道を切り開かなければなりません。
どこかの介護施設が始めなければならないのです。
そこで、愛寿会として取り組んでいこうということになりました。
日本語の研修期間中に、私は、横浜の研修所に3回足を運び、本人とコミュニケーションをとりました。
彼女は優秀で、行く度に日本語が上手になっていました。
研修計画と研修プログラムを練り、厚生労働省の国際厚生事業団と意見を重ねました。
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研修計画と研修プログラムに従って、現在は研修を始めています。
いきなり現場に入ってはコミュニケーションがとりにくいと思います。
そこで、月曜日と木曜日は現場実習、それ以外の日は、2時間の学科勉強を行っています。
まずは施設に慣れることが大切です。
研修をしっかりと行い、それから、お年寄りとコミュニケーションをとっていった方がよいと思っています。
現在、ヘルパー講習を受けていますが、終了したら食事介助にも取り組んでいく予定です。
少しずつ現場に向かって取り組んでいきたいと思います。
【環境整備】
・ 管内表示板に、ひらがなのシール
・ 介護マニュアルの見直し(イラストを入れる等)
【文化対応】
・ 1日5回の礼拝 ⇒ 礼拝する方向に窓がある部屋を用意。休憩時間を利用。お昼過ぎと遅い午後の2回。
・ ジルバブ(スカーフ)は白色に限って認める。
・ 家財道具、携帯電話、テレビ等の準備。
・ 同じアパートのスタッフが色々とサポート。
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一番の問題点は、3年後の介護福祉士試験に合格できるかということです。
彼女は優秀ですので、しっかりと研修を重ねることにより、言葉での説明や実技は問題ないと考えています。
しかし、問題は日本語で出されます。
ただでさえ難しい日本語に、言葉のニュアンスが難しい記載での問題となります。
文章の読解力、漢字への対応が大きな壁になってくると思います。
国が、この『言葉の壁』にどのように対応してくれるのかということが問題です。
できれば、日本語とインドネシア語の両方の記載か、選択性にしてくれることを願っています。
それが難しければ、せめて漢字にふりがなを振ってほしいですね。
介護福祉士試験に合格しなければ、帰国となってしまいますので、日本の3年間は無駄ということになってしまいます。
(ちなみに、インドネシアとは違い、フィリピンからの研修生の場合は、3年間の勤務だけで試験が免除され、介護福祉士が取得できるようになっています。)
また、合格しても、私たちの施設で働かなければならないという制約がないため、他の介護施設への転職を希望されたり、帰国を希望されたら、私たちは止めることができません。
すべては本人の意思が尊重されるのです。
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他国からの研修生を受け入れるためには、それなりの覚悟と責任を持って受け入れることが大切です。
受け入れるからには、きちんと教育をして定着してもらわなければなりません。
それが、介護施設のためであり、ひいては日本の未来の介護のためとなります。
まだ受け入れて間もないのですが、私たちは受け入れてよかったと思っています。
インドネシアのお国柄だと思うのですが、彼女は、『自然とお年寄りを敬愛』されています。
年配の方は、尊敬するのが自然なこと。
私たちは、普段から『お年寄りは大切にしなければならない』『お年寄りを尊敬しなければならない』『お年寄りの意思を尊重しなければならない』という風に、意識しているような気がします。
彼女はそんな意識をすることなく、持って生まれた自然な状態で、そのように接しています。
素直な姿勢でお年寄りの話を聞くことで、お年よりも自然と心を開きます。
共感、シンパシーといった、介護にとって大切なもの、日本人がもしかしたら忘れかけていたものを気付かせてくれます。
私たちが彼女から学ばせていただいているものは、とても大きいように思います。
これから、3年間、彼女とともにお年寄りの介護を行っていきますが、彼女が介護福祉士の試験に合格し、日本の介護人材としてしっかりと働いていけるように、サポートしていきたいと思います。
そして、多くの他国の介護人材が、日本で気持ちよく働ける環境作りをしていきたいと思います。
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特別養護老人ホーム 愛寿荘
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