2023.02.08メディカサイトコラム
介護ロボット・IT機器は、介護の現場の時間短縮にどれほどの効果があるのか?SOMPOケアさんの事例を検証してみます!
先日、厚生労働省の実証事業である「令和4年度介護ロボット等による生産性向上の取り組みに関する効果測定」に取り組まれている、SOMPOケア「そんぽの家城南」さんでの取り組みの報告記事を見ました。
この実証実験は、次期介護報酬改定の論点でもある「人員基準緩和」の可能性を探ることが目的となります。
目次
令和4年度介護ロボット等による生産性向上の取り組みに関する効果測定の実証テーマ
①見守り機器等を活用した夜間見守り:
特養のほか老健施設等40施設を対象に、見守り機器を複数導入することでケアの質の確保と職員の負担軽減が可能か実証する。
②介護ロボットの活用:
特定施設を含む40施設が対象。移乗支援(装着・非装着)、排泄予測、介護業務支援に関する機器の効果を測定。機器の組み合わせ効果についても検証する。
③介護助手の活用:
特養や老健施設等20施設を対象に、介護助手の業務と役割分担を明確化し、ケアの質の確保や職員の業務負担軽減の効果を検証。
④介護事業者等からの提案手法:
社会福祉法人善光会、SOMPOケア株式会社、株式会社チャーム・ケア・コーポレーションの3件を選定。それぞれ特養2施設、特定施設12施設、特定施設3施設の取り組みを実証する。
介護ロボットやICT機器を導入し、業務時間をどのくらい削減できるのか?ということを実証実験していきます。
SOMPOケアさんが取り組んでいるのは「④介護事業者等からの提案手法」の実証テーマです。
介護ロボットやICT機器を使用することにより、3:1未満の人員基準であっても、介護サービスや職員負担に悪影響が生じないことを、定量的に確認するための実証実験です。
つまり、これだけ時間が削減できるから、人員基準をこれだけ減らせますよね?という提案を行うための実証実験となります。
※ちなみに介護ロボットとは、介護機器・センサーなどを指します。
実証実験による業務時間削減効果
SOMPOケア「そんぽの家成城南」さんの、1日あたりの業務時間の削減は、なんと926分!約15.5時間分の削減ということです。
これは、約2人分の1日の労働時間を削減できたということですね。
その内訳を見てみましょう。
睡眠センサー・介護記録システム
こちらは、SOMPOケアさんでは、既に導入済みということで、効果測定の対象外となっています。
睡眠センサーはパラマウントの「眠りSCAN」
2020年9月末までに累計55,000台が導入されています。
実際に導入されているご施設を見学させていただいたことがありますが、睡眠、覚醒、呼吸数、起き上がり、離床がスタッフルームでリアルタイムで確認できるのは素晴らしいですね。
特に夜勤帯で大きな力を発揮すると思われます。
介護記録システムには様々な商品が出ています。
SOMPOケアさんは、オリジナルのシステムを利用されています。
介護記録システムは、導入することによって、記録時間が短縮されるケースと、逆に延びてしまうケースがあります。
事業所との相性、導入教育、行政の方針など、導入には十分な検討が必要ですね。
自動体位交換機
いわゆる「床ずれ防止」「褥瘡防止」のための体位交換機です。
1日の時間短縮効果は、なんと108分!
寝たきりの入居者さんが対象となりますが、体位交換のための時間というのがどれだけ多いのかがわかる結果ですね。
ただし、機械に頼りすぎるのは危険です。
体位交換機は「正しい位置」に「正しい姿勢」で横になっていただくことが基本です。
体位交換機をベースに、見守りもしっかり行えると安心ですね。
介護用シャワー
詳細がわからないのですが、おそらく、お湯を溜めずに、ミスト等で体を洗浄する、座って入る入浴設備のことだと思われます。
1日の時間短縮効果は、49分。
お湯を溜めたり、抜いたりする時間の短縮だと思われます。
課題は、日本人の入浴習慣と違うので、満足度がどうなのかな?ということでしょうか。
ウルトラファインバブル発生装置
こちらもお風呂用の機器ですね。
目に見えないほどの小さな泡を発生させることで、ボディーソープや擦り洗い不要で、身体の汚れを落としてくれるそうです。
1日の時間短縮効果は、74分。
こちらも、課題は、日本人の入浴習慣と違うので、満足度がどうなのかな?ということでしょうか。
皮膚が薄く、弱い方にとっては、とても良い機器のように思われます。
再加熱カート
こちらは食事の出し方、そのものを見直す必要がありますね。
クックチル系の食事の導入に伴うかと思います。
1日の時間短縮効果は、驚きの595分!約10時間です。
今回の実証実験結果の多くは、この再加熱カートのお陰ともいえます。
比較対象がわからないのですが、調理をして、調理後に温冷配膳車で運んで、という部分の削減でしょうか。
クックチル方式だと、チルドされた料理をお皿に並べて、再加熱カートに入れておけば、その中で適温に加熱されるため、調理時間が短縮できるのは大きなメリットですね。
調理員の確保問題や、給食委託会社へのコスト等も含めて、課題解決の一つの方法になるかもしれません。
調理員さんによる、利用者さんの個別対応は現場でするのでしょうか?
チャットツール
ロゴからして、明らかに「LINE WORKS」ですね。
社内チャット構築として、使いやすいツールかなと思います。
1人1台スマホを持つ時代ですので、チャットツールの利用は、必須の時代かなと思います。
ただし、個人のLINEアカウントを業務に使用することは嫌われますので、操作性が似ている「LINE WORKS」で、業務用のもう一つのLINEアカウントを持ってもらうのは、双方にとって良いかなと思います。
退職時のアカウント管理もシンプルでトラブルがありません。
1日の時間短縮効果は、30分。
日々の業務に関しては、このぐらいになってしまうのかもしれません。
情報伝達のための「伝達会議」が必要なくなるメリットは大きいと思います。
高性能ドライヤー
入居者さんの入浴後の「髪を乾かす時間」の短縮が目的です。
1日の時間短縮効果は、55分。
逆に、これまでどんなドライヤーを使っていたのだろう?という疑問もセットで。
自動体重測定
おそらく、こちらの商品ですね。
ベッドに設置するだけで、体重測定、離床検知ができる機器です。
1日の時間短縮効果は、15分。
離床しないと体重がわかりませんし、離床できる人は体重計に乗れるし、と活用が限られるかもしれません。
オムツ回収機
個人的に、これは良いなぁと思います。
使用済のオムツを、自動的にラッピングして個包装してくれるので、衛生的にも、臭いの削減にも効果的だと思います。
おそらく、こちらの商品ですね
日本セーフティーさんと、SOMPOホールディングス運営の、未来の介護の研究所「Future Care Lab in Japan」が共に開発・実証評価に取り組まれているようです。
1日の時間短縮効果は、なんと216分!
再加熱カートに次ぐ、大きな時間短縮効果ですが、現場に役立つ実質的な効果では、最も優れているのではないかなと思います。
価格は、わずか214,500円(税込)です!
ということで、SOMPOケアさんの「令和4年度介護ロボット等による生産性向上の取り組みに関する効果測定」の結果について、考察してみました。
インカム(トランシーバー)
個人的には、インカム(トランシーバー)は導入した方が良いのではないかと考えています。
デイサービスでの導入は全国的に増えてきましたよね。
入居施設の現場でも、大きく役立つのではないかなと思います。
大声で指示・伝達・確認をする必要がなくなります。
何でもかんでも、機器やITにとって変えれるものではないと思いますが、現場の職員さんが、介護に集中できるよう、利用者さんと関わる時間を最大限に取れるようにするためのツールは、常にチェックしておきましょう!