2024.07.03メディカサイトコラム
虐待防止と身体拘束防止は分けて考える方が良い?
2024年度の介護報酬改定により、全介護事業所で職員への「虐待防止」「身体拘束防止」の研修が義務化されまました。
・虐待防止研修の実施(年1回以上)
・身体拘束等の適正化のための研修実施(年1回以上)
メディカサイトの職員向けセミナーでは
単体での研修も行っていますが、虐待防止と身体拘束防止の同時研修を行わせていただくことが多いです。
セミナー内容を作成したり、セミナーを行っていて気付いたことがあります。
それは
・虐待防止研修は、職員のみで実施した方がよい
・身体拘束防止研修は、ご家族も一緒に実施したほうがよい
ということです。
虐待防止研修は、介護施設での虐待という、なかなか生々しい話をしなければなりません。
虐待文化は一朝一夕で築かれるものではなく、接遇面や介護技術などの不備・不足が積み重なって起こります。
そのため、ご家族が聞いていて、気持ちの良いお話ではありません。
逆に、身体拘束防止研修はご家族も一緒に取り組んだ方がよい研修です。
なぜなら「安心・安全な介護」と「身体拘束防止」は、相反することが少なくないからです。
身体拘束は、原則として高齢者虐待に該当する行為ですが、(悪意を持って行う場合を別として)介護の現場レベルでは、必要に応じて行うことも起こり得る行為だからです。
例えば、転倒する可能性が高い方が、いつも歩き回られる場合
例えば、不安のため攻撃性が上がっている方により、職員さんや他の利用者さんに危険が生じる場合
例えば、点滴や胃瘻が必要な方が、いつもチューブを引き抜こうとする場合
例えば、皮膚がかなり薄くなっているのに、いつも掻きむしろうとしている場合
このような行為が日常茶飯事だった場合に、どうすれば良いのか?
ということになってきます。
「安心・安全な介護」と「身体拘束防止」は、相反することが少なくありません。
※そのため、「緊急やむを得ない場合」の「3つの要件」を全て満たす場合は、条件付きで身体拘束が認められています。
だからこそ、ご家族への説明、理解、同意が重要になってきます。
2001年に厚生労働省より
身体拘束ゼロへの手引き
●高齢者ケアに関わるすべての人に●
という手引きがでました。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/gyakutai/torikumi/doc/zero_tebiki.pdf
2001年発行・・・
かなり古い時代の情報に基づく手引きなのですよね。
2024年3月、ついに改訂版の
介護施設・事業所等で働く方々への
身体拘束廃止・防止の手引き
が発行されました!
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001248430.pdf
なんと、あれから23年ぶりの改定なのです。
皆さんはご覧いただいていますでしょうか?
まずは、ぜひ、全員で一読していただければと思います。
この手引きの中で、「身体拘束防止」に向けた、6つの介護事業所の取り組みが紹介されています。
読んでいただければわかりますが、「安心・安全な介護」と「身体拘束防止」が矛盾しまくっています。
だからこそ、ご家族にも参加していただいて、知識や現状を共有し、理解と対応を行っていく必要があります。
そのためにも、身体拘束防止研修はご家族にも参加していただいた方がよいのですよね。
法に基づく原則、ご家族やご本人のご要望、介護の現場の実情、「安心・安全な介護」と「身体拘束防止」
しっかりと学び続けることで、より良い介護の現場になっていくのではないかと思います。
運営推進会議等で行うのも良いかと思います。
メディカサイトセミナーでは、わかりやすい研修を行っております。
1時間の職員向けセミナーはもちろん、運営推進会議で30分程の短縮版のお話も行っております。
ぜひ、ご活用くださいませ。