2015.05.01今月のメディカサイト特集

『愛媛学習療法研究会 東北大学・川島 隆太 教授 講演会』

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学習療法とは、『音読』と『計算』を中心とする教材を用いた学習を、学習者と支援者が『コミュニケーション』を取りながら行うことで、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図るものです。

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非薬物療法というものがあります。
行動療法、認知療法、刺激療法などがあります。
認知療法には、回想法やオリエンテーション等が含まれます。
刺激療法には、芸術療法や音楽療法等が含まれます。
これらの療法は多くの場所で取り組まれていますが、致命的な問題点としましては、『効果について厳密な評価が行われていない』ということです。
そのため、医師としては評価が行われていない療法は、責任が持てないので、処方箋に書けない。
従って、医師サイドが処方箋に書ける療法が必要なのです。

もっとも、医師が考えたものは、机上の空論が多いのも事実です。
我々が考えた学習療法は、幸いにも、現場で実証された例が多いということは非常にラッキーでした。


ここで、『人間』の勉強をしたいと思います。

大脳には前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの部位があります。
前頭葉は運動を支配、頭頂葉は触覚を支配、側頭用は聴覚を支配、後頭葉は視覚を支配しています。
すなわち、場所ごとに違う仕事をしているということです。

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この中で、前頭前野(連合野ともいう)は、人間だけが発達している部分で、行動、情動の抑制を行っています。
すなわち、がまんする力があるということで、意欲や集中力、自発力の源となります。
また、顔の表情が出たり、コミュニケーションを取ったりすることができます。

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人間は年齢を重ねると、体力の低下と共に、頭の能力も低下していきます。
一般的に、20歳からは低下していっているのです。

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まず、長期記憶の呼び出しが低下します。
すなわち、『あれ』『これ』『それ』といった指示代名詞を使うことが増えてくるのです。
日本では、夫婦間の『あ・うんの呼吸』といって美化されていますが、脳科学の分野では長期記憶の呼び出し障害というのです。(笑)

次に、短期記憶の取り込み障害が起こってきます。
すなわち、物忘れが起こり始めるということです。

そして、情動の制御力が低下してきます。
昔は悲しい映画を見ても涙一つ出なかった人や、美しい絵画を見ても何も感じなかった人が、最近、涙もろくなったり、感受性が高くなったりしていませんか?
これも、前頭前野の障害なんですよ!(笑)

そして、高齢者になると、『認知症』の症状が出てきます。
行動の制御ができなくなると、おかしな行動をとるようになります。
情動の制御ができなくなると、感情が乱れやすくなってきます。
すると、コミュニケーションが取りにくくなります。
そうなると、人と会うのが嫌になってくるため、意欲や自発性の低下が起こってきます。
その結果、身辺の自立ができなくなってくるということになってきます。
これは、前頭前野の障害のせいなのですよね。


そこで私たちは、この前頭前野を鍛えることができないかと考えたわけです。

『作動記憶』というものがあります。
一時的に情報を保持し、操作するためのシステムです。
実は、トレーニングをして作動記憶をアップさせると、様々な作業をスムーズにこなせるようになるということがわかっています。
これを『転移効果』といいます。
さらに、流動性知能もアップすることがわかってきました。
流動性知能とは、新しい問題を解決する方法を見つける能力で、本当の頭の良さとも言われており、これまでは遺伝と思われていました。
ところが、トレーニングすることによりアップすることがわかってきたのです。
また、脳を鍛えると、大脳皮質の体積が増加してくることもわかってきました。

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私の研究室の学生たちには、ストループテスト、視空間スパン課題、Nバック課題などのトレーニングを行っていますが、一般の方にこのような専門的なトレーニングは難しいかもしれません。
(実際に会場でテストを行いました。)

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そこで、研究の結果、『単純計算』と『音読』が、作動記憶を働かせるということがわかりました。

認知機能を検査するために、日本では長谷川式スケールが使われることが多いですが、世界的には、MMSE(Mini-Mental State Examination=認知機能検査)が使われています。
一般的に、アルツハイマー病の方は、4年でMMSEが1/9の能力になることが知られています。
学習療法で、このMMSEの低下が抑えられたり、維持・改善したりすることがわかっています。

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学習療法は、『読み書き計算』だけではダメで、コミュニケーションを取ることが大切です。
スタッフの働きかけにより、脳機能改善効果に差が出てきます。
したがって、声かけが大切なのですね。
特に、褒める声かけに効果があります。
ただし、『読み書き計算』が終わった瞬間に褒めないと意味がありません。


私たちが、学習療法の取り組みを始めた頃、『ドリル=虐待』と考える方もおられました。
しかし、実際に取り組んでみると、実は喜んでされていることがわかります。
学習療法の時間帯になると、お部屋から出てこられて、時間を待たれるようになるのです。
そのような事例を、私たちは数多く経験しています。

また、学習療法を行うことは、介護者の介護の質も変えてくることがわかってきました。
お年寄りと、1対1の時間を持つことができたり、観察力が高まることで、様々なことに気づくようになってきました。
学習療法は、お年寄りの方にとっても、介護の質を高めるためにも良いのです。

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現在、学習療法は世界にも広がってきています。
アメリカやイギリスでも、トライアルがスタートします。

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学習療法を通じて、世界中の多くの方が、よりよい人生を送っていただければと思います。


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愛媛学習療法研究会のテーマ
学習療法を通じて、施設間の連携を通じて学びあい、
施設の向上に向けて取り組んでいき、
地域の支援体制のネットワークを創っていきたい。
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くもん学習療法は、10年前、国のプロジェクトとして、九州の介護施設とくもんで取り組み始めました。
今では、全国1,400ヶ所にて、16,000名の高齢者が取り組まれています。
愛媛県には36施設が取り組んでいます。
今回の講演会は、愛媛県学習療法研究会が地域の皆さんのために開催された講演会です。

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日本の平均寿命は世界において長いですが、平均寿命も、その中身が大切です。
長寿に意味が出るよう、学習療法を通じて貢献していきたいと思います。


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会場では、学習療法の教材や、学習療法に取り組んでいる介護施設の発表などが展示され、多くの方が真剣にご覧になっていました。

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【学習療法に関するお問合せ】
愛媛学習療法研究会
〒791-1114
愛媛県松山市井門町1099
特別養護老人ホーム和光苑内
TEL: 089-969-0001

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