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「医療メディエーションの理論と
日本医療メディエーター協会設立の意義」 |
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日本医療メディエーター協会専務理事
早稲田大学大学院法務研究科 教授
和田 仁孝 さん |
近年、医療事故関連の警察への届出数と立件数は増加してきています。
医療訴訟件数も年間1,000件前後になってきております。
医療事故における従来型の対応は、患者側と医療側が対立的構造となる、二項対立でした。
患者側は構えてしまい、医療側は病院を背負って話し合いを行っておりました。
これが、「病院を背負わない」院内メディエーターを介する三極構造となると、院内メディエーターが、患者側、医療側の双方と信頼、支援の関係を作って、患者側と医療側の対話を促進する形になってきます。
メディエーターは、患者と医療者の直接対話の支援(ケア)を行うことが役割です。
行動規範としては、
1. 自身の意見・見解の表明は一切行わない
2. 医療者の見解を伝達しない
3. 職員であること、橋渡し役であることを明示
4. 患者の選択・自由を尊重
5. 法的問題・賠償問題には立ち入らない
ということが大切です。
メディエーターは、紛争請負人ではありません。
メディエーターを院内でうまく機能化させるためには、まずは、病院の上層部の理解が必須です。
また、情報・真実を開示するという基本方針も必要です。
日本医療機能評価機構では、医療メディエーターの研修を行っております。
受講者は年々増えてきており、昨年2008年は、942名の方が受講されました。
医療メディエーターは、「いつでも、誰でも、どこでも」行えるよう、資格ではなく、認定制度を取っています。
日本医療メディエーター協会としては、養成プログラムの認証や、プログラム受講者の認定、質の向上・研鑽活動、研究活動、普及活動などを行っていきます。
ぜひ、多くの方に受講していただき、誰もがメディエーションを学ぶことにより、対話型の問題解決を目指していただければと思います。
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「医療メディエーションの実際と
医療メディエーターの養成」 |
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日本医療メディエーター協会理事
国立大学法人山形大学医学部 総合医学教育センター 准教授
中西 淑美 さん |
そもそも、患者と医療者の関係とは、病気で困っている患者と、何とか援助したい医療者という、パートナーとしての信頼関係のもとに成り立っているものです。
それが、医療紛争が起こってしまうと、治療・説明・対応・診断・看護・管理への疑問が発生してしまい、信頼関係が崩れてしまいます。
信頼を再構築するためにも、対話が必要です。
本当は「救いたかった」「救ってほしかった」という、思いがあることに、お互いが気付くことが大切なのです。
メディエーション教育では、第1部として、総論(導入編)を2時間半行い、各論に入っていきます。
各論では、基礎編(18時間以上2日間)、継続編(16時間以上2日間)、応用編(16時間以上2日間)、トレーナー養成コース編(32時間以上4日間以上)と、段階を踏んでステップアップしていきます。
医療メディエーションの姿勢は、SKILL(技法)よりWILL(意思)です。
信頼の再構築を目指す意思(WILL)のある対話過程を目指すことが大切です。
説明したつもり、理解したつもり、といった、本当は分かり合えないことを前提とした、対話が必要です。
メディエーターは、代弁者ではありません。
当事者による当事者のための解決を目指すお手伝いをすることが、メディエーターの仕事です。
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日本医療メディエーター協会理事
佐々木 孝子 さん |
私の息子はバイクの自損事故で救急病院に搬送されました。
しかしながら、緊急を要する事態を把握しなければならないのに、担当医療者達は、単なる打撲と決めつけ、CTやレントゲンに描出された画像を見逃し、9日目の造影剤による検査で内臓破裂に気付いたときには既に手遅れで、息子は亡くなってしまいました。
医療者の誠実でない説明や態度に、やり切れない思いと怒りで、医学にも法律にも素人である私は、医療過誤訴訟に挑みました。
裁判は、途中から弁護士を解任し、本人訴訟での長く苦しい戦いで、結果は全面勝訴となりました。
しかし、勝訴しても、息子が帰ってくるわけではなく、むなしい喪失感が残ったままです。
裁判とは、闘争心を持って争うことであり、決して謝罪や感情を表すところではありません。
賠償や法律判断より、ミスはミスとして認め、謝罪してもらいたいという、医療者の誠意が欲しいのです。
誠実な説明や対話がないままに放置されると、不信感が募り、訴訟という手段を取らざるを得ないのです。
一方で、精神的・経済的に負担の大きい裁判を起こさずに真相を究明できる方法が、院内メディエーションだと思います。
医療メディエーターの介在により、直接対話により、情報開示と医療者の誠実な説明や、誠意のある対応を示してくれれば、患者にとっても、少しでも区切りをつけることができ、納得することができるのではないかと思います。
医療者と患者が対立するのではなく、お互いの立場を尊重し合うことが大切なのです。
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「福井総合病院における
医療メディエーションの実践」 |
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日本医療メディエーター協会理事
福井総合病院あんしん(安全・安心)部長
林 里都子 さん
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当院では、クレームの発生による信頼関係の崩壊に対応すべく、平成14年から独自の取組みを行っていました。
当事者同士の話し合い「面談」を導入し、中立的介入を行いながら、解決を目指してきました。
平成16年に、和田先生の講義でメディエーションの考え方を聞き、これまで行ってきたものこそ、メディエーションであったのだと気付き、正式に医療メディエーションを導入いたしました。
クレーム対応では、まずは、事実経過の検証から行います。
事実経過の検証から、見えないものが見えてきます。
患者・家族側と、医療者側の認識のずれが、感情の増幅を招きます。
事実経過の検証を行い、双方の話し合いにてすり合わせを行っていきます。
そして、事実を透明化し、情報の共有化を行い、精神的支援を行います。
患者・家族側が医療者に求めるものとして、
・ 真実が知りたい、きちんと説明してほしい
・ 誠意ある対応、きちんと謝罪してほしい
・ 再発防止策をとり、二度と同じ目に合わせたくない
といったものに分類されます。
面談により話し合いを行い、迅速、適切に対応することが大切です。
クレーム中は、我を忘れたり、人間性を失いかけたり、自分自身を責めていたりすることがあります。
我に返った時、クレーム者・医療者の双方に「後悔」が残らないよう、メディエーターは援助していかなければなりません。
医療メディエーションは、質との対話だと思います。
こころの叫びに寄り添って、人として真摯に向き合うことから、解決の糸口は見つかるのだと思います。
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日本医療メディエーター協会 東海支部代表
安城更生病院 医療安全部長 神経内科部長
安藤 哲朗 さん
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医療の信頼とは、昔は権威に対する盲目的信頼(パターナリズム)であったものが、今は適切な情報提供と対話による信頼(パートナーシップ)に変わってきています。
パターナリズムでは、全面信頼の名のもとに、リスクは医療者のみが負っている状況です。
パートナーシップでは、適切な情報提供と対話により、戦略的に患者に参加してもらい、リスクを共有する形となります。
インフォームドコンセントも、説明と同意から、説明と合意になっていく必要があります。
説明と同意では、医療者はわからせたつもり、患者はわかったフリをしている状況になってしまうことがあります。
メディエーターを介在させることにより、例え悪い結果(リスク)が起こった場合でも、共に病苦と戦うパートナーとしての解決が可能になるのではないかと思います。
医療事故はいつ起こるかわからないものです。
そのため、術前の信頼関係の構築、患者・家族との共感が大切であり、事故後の正直さと謙虚さ、状況の明確化、医療行為の精査などが大切になってきます。
患者と医療者はパートナーなのです。
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