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>>今月の特集
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あの時に何が起こり、どう対応したのか?
新型コロナウイルスの拡大を最小限に抑えた
介護付有料老人ホーム四葉の24日間に迫る!(後編)
~管理者と現場の具体的な動き~ |
2020年5月13日と5月22日、入居者さんに新型コロナウイルスの感染が判明した、介護付有料老人ホーム 四葉 さん (松山市高山町)。
その当時の様子や対応について、四葉グループ 代表取締役の上西光宣 さん、指揮を執られた統括課長の日野亮介 さん、現場の最前線で活動なされた管理者の宮本なるよ さんにお話を伺いました。
今回のメディカサイト特集では、前編・後編にわけて掲載させていただきます。
後編では、管理者の宮本さんが注力された点に焦点を当てて、まとめていきます。
①~④については、前編をご覧ください。
https://www.medica-site.com/special/index-yotsuba1.html
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(管理者の宮本なるよ さん) |
感染拡大を防ぐため、普段使いしていた食器を使い捨ての弁当箱に変えたところ、ゴミの量がいつもよりもずっと増えてしまいました。
一日で20袋ほどのごみ袋が出るので、一時的に駐車場を潰して保管することにしましたが、諸々の対応に追われ、ごみ収集への連絡がおそくなった為、初期にゴミが溜まってしまった点は反省点でしたね。
関係医療機関や、出入り業者への連絡をスムーズに行うため、平時からリスト化しておくべきでした。
今後の改善点の一つです。
自社ホームページの情報掲載方針の決定も、この緊急ミーティング時に行いました。
全国の事例より、誹謗中傷などの心配もあったが、関係者の不安解消のためには「早い方が良い」という判断で、5月15日にホームページへ掲載を決定したのです。
ホームページへの掲載前に、入居者さんのご家族にすべてご報告しておりましたので、掲載後にお電話などでの問い合わせ対応に時間を割くことはありませんでした。
幸いなことに、四葉グループでは、各事業所の人材採用が終わったタイミングでした。
四葉グループグループ内のどの施設も人員が揃っていたので、グループ内の他施設から応援もお願いしやすく、応援職員の休業補償や危険手当などについても、この時に話し合いましたね。
日野統括課長の指示は、ホワイトボードの両面を使って伝達されました。
・表面には、PCR検査陰性の場合
・裏面には、PCR検査陽性の場合
陰性と陽性「2つのパターンの指示」を、情報を施設内で共有。
こういう流れで動く、というイメージが湧きやすいので、動きやすかったですね。
指示命令系統が一本化されていることで、現場の混乱を最小限に抑えられました。
絶対に行うべき行動は紙に書き、壁や窓に貼って徹底しました。
現場の対応補助は、フロア職員が意見・知恵を出し合うことで対応しましたね。
2階のフロア職員は全員、濃厚接触者として自宅待機だったので、入居者さんへの細やかなケアは探り探りでした。
以前、2階を担当されていた人が応援に来てくださり、入居者さんへの細かいケアの方法を覚えていたため、他の職員へ知識や経験の共有ができて助かりました。
フロアは、グリーンゾーンとイエローゾーンに分け、居室以外はグリーンゾーンであるように徹底しました。
・イエローゾーンは濃厚接触者が居られる居室。
・グリーンゾーンは、清潔な場所。
入居者さんがウォーキングなどでお部屋から出られたら、イエローゾーンとなります。
消毒することでグリーンゾーンに戻るので、すぐに手に取れる場所に除菌のセットを設置し、入居者さんの動きを気にしながらの業務でした。
四葉は介護付き有料老人ホームのため、各居室に洗面所とトイレが設置されています。
そのため、2つのゾーンを明確に分けることが出来、衛生管理が徹底できたのです。
新型コロナ対応が終息するまでは、自分たちが理想としている介護と『真逆の介護』をしなければならないのが心苦しかったですね。
「一人一人と深く関わり、きめ細やかな応対をすること」を、入居者さんと職員は理想としているのに、実際は居室へ入居者さんを押し込んでいるような状態でしたから。
コロナ禍とはいえ、入居者さんと職員との係わりの度合いは落とすことはできません。
我々には「ずっとこのままではないだろうけど…いつまで続くのか?このままで良いのだろうか?」という葛藤がありました。
今後、このようなシチュエーションに陥った際、本来の介護ができないという職員のストレス緩和、入居者さんの自由が制限されるストレスの緩和を考える必要があります。
また、2階の濃厚接触者の居る感染フロアへのサポートが手厚くなり、スポットが当たり過ぎると、人員を割かれている3階のクリーンフロア職員の負担や心労が増えてしまう点も、今後の課題の一つではないでしょうか。
良い案は、ギリギリの状態よりも余裕のある状態で生まれることが多いものです。
「もし、そうなったら?」を想定し、備えておくとよいかと思われます。
6月8日、11時。
新型コロナウィルス終息後に、Bさんがグループホーム四葉へ戻られました。
AさんとBさんの接触は、Aさんのご入居歓迎会ですれ違った程度でした。
Aさんと一緒の部屋内で過ごしていたAさんのご家族は陰性。
AさんとBさんの座席は3メートルほど離れていたこともあり、感染した原因は不明です。
Bさんは、退院後に施設へ戻られた際、なんとなく他の入居者さんと距離ができてしまいました。
Bさん自身も気にされており、新型コロナの終息後も入居者さんの心のケアが大切です。
「新たな感染源になってしまうのではないか…?」
新しい入居者さんの受け入れのための、職員の不安に対するサポートにも気を配らればなりませんでした。
新しい入居者さんが感染していないかどうか、ご入居の1週間前から調査を行い、状況を確認する必要があります。
ご入居予定者さんがデイへご参加されているのであれば、デイへ直接お電話して、微熱や咳などの風邪症状はないか?など、事前に様子を確認させてもらうなどの対応をとっています。
デイサービスであれば、施設をお休みすることができるけれど、有料老人ホームは入居者さんの「お家」なので、お休みすることができません。
現在の新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者の定義に基づいた対応では、介護人員がどんどん削減されてしまい、運営が困難になってしまうので、自己防衛が大切です。
事態収拾に向けての行動と同時進行で、「PCR検査で濃厚接触者が出た際、職員の家族、生年月日、住所、電話番号などを調べてまとめていく作業が大変でした。
保健所と県に提出するリストに、内容の違いがあったため、忙しい中での作業が増えてしまった状態です。
ただでさえ混乱しているので、県や保健所は今後、そういった点の連携強化が強く求められてくるのではないでしょうか?
県内外で、医療機関や介護施設での感染がテレビなどで報道されており、以前より、「いつ、自社の施設で感染者が発生してもおかしくない」という危機感を常に持っていましたね。
常に先々を想定しながら、後手に回らないように、早め早めの行動を心掛けました。
「今後、この物資が足りないのでは?」と感じたら、上西代表に相談し、先手を打って発注していたおかげで「この激動の24日間で、アレが足りない!と困ることがありませんでした。
その点は、ささやかかもしれませんが、我々の心のゆとりに繋がったように思います。
ホームページへの掲載も、本当に不安でしたが、ねぎらいや応援の言葉が多く、ありがたかったですね。結果的に早く公表しておいて、よかったです。
「応援で入りたい」と言ってくれる職員もいたのですが、ご家族の仕事の関係で入れないこともありました。
その点、一人暮らしの方は応援職員として活躍してもらえやすい傾向があり、助けられましたね。
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(代表取締役 上西光宣 さん) |
最終の2日間は職員の配置はギリギリでしたが、なんとか乗り越えることが出来たのは、誰一人として職員が辞めることなく、協力して頑張ってくれたから。本当に、心から感謝しています。
その時点での最良の選択を重ねた結果、感染拡大を防ぎ最小限の被害で抑えることができた四葉グループ さん。
特に重要な点は、以下の3項目です。
・「もし、自分の施設に感染者が出たらどうする?」という危機感を持って、常に最善の方法を模索すること。
・もしものときの為に、平時から関係機関の連絡先リストを作っておくこと。
・早め早めの情報共有・情報発信を心掛けること。
四葉グループさんの感染対策に対する姿勢は、新型コロナウイルスだけでなく、その他の感染症などの危機に陥った際、きっと役に立つでしょう。
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