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まず最初に医療法人 杏園会 熟田通所リハビリテーション 統括主任 森本さんによる
特別講座「学習療法によるコミュニケーションとは」が行われました。
学習療法で大切なのは、
利用者×スタッフのコミュニケーション
スタッフ×スタッフのコミュニケーション
スタッフ×家族のコミュニケーション
この、3つのコミュニケーションであると言われています。
熟田通所リハビリテーションでは、これらのコミュニケーション向上のため、以下のような工夫に取り組んでいます。
【 スタッフ間の情報共有 】
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日記を書くときは、内容がほかのスタッフに伝わるよう記す |
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※他者が読みたくなるよう、興味が持てる楽しい内容にする |
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変化に気づいたらすぐに報告できる体制をつくる |
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普段から発言しやすい環境をつくっておく |
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月次検討会において、日報の内容や文章についてスタッフ同士で批評してみる |
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【 家族との情報の共有 】
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変化等があった場合は、送迎時に必ずご家族に報告する(口頭および連絡帳の使用) |
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ご家族からも変化について報告してもらう |
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普段からご家族とも会話を重ね、情報を共有しやすい環境をつくっておく |
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できる限り、自宅でも家族と学習をしてもらう(宿題を渡す) |
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【 現場での工夫 】
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1対1、2対1のみでなく、3対2、4対2などのグループでの学習とコミュニケーションを実践する |
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学習者、スタッフともにコミュニケーションが取りやすい距離感を模索する |
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他国の言語やリズム、メロディ等を導入し、テンポのよい学習を模索する |
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学習者の興味がある事柄をリサーチする |
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利用者とスタッフの関係を再構築してみる |
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コミュニケーション能力の向上がなければ、学習療法はただのルーティンワークになってしまいます。
学習療法を発展させるのは自分たち。
大切なのは、施設やスタッフ、利用者ごとに最適なものを創造していくことなのです。
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続いて、2つの施設より学習療法の実践報告が行われました。
両施設とも、学習療法を実践してきたことによって
利用者の変化が表れるとともに、課題も見えてきたそうです。
※結果は一例であり、効果をうたうものではありません。
【 株式会社 エイジングウェル アユーラデイサービスセンター 】
■ 利用者の変化 |
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ほかの利用者への気遣いができるようになった |
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笑顔が常に見られ、明るくなった |
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受け答えのつじつまが合うようになった |
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相手に合わせたユーモアのある会話ができるようになった |
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スタッフによって、利用者が態度を変えるように → コミュニケーション力アップ? ・・・など |
■ 課題 |
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スタッフごとの、コミュニケーション能力に差がある |
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スタッフ配置の限界 |
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利用者の家族との連携が弱い(フィードバックが薄い) |
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利用者・スタッフ双方のマンネリ防止 |
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学習療法を生かした介護計画の実施 |
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ほかのサービス(パワーリハビリ等)とのバランス |
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【 社会福祉法人 三善会 デイサービスセンター春賀 】
■ 利用者の変化 |
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トイレ誘導に素直に従われるようになった |
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レク・創作活動にも参加するようになった |
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教材によって話題が豊富になった |
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失禁が止まり、意識喪失発作がなくなった ・・・など |
■ 課題 |
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利用者と視線を同じにし、幅のある深いコミュニケーションを |
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各利用者に合った学習を提供することによって、生活の質向上を目指す |
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一人の利用者とゆっくり付き合えるチャンス→個別ケアについて考えるきっかけに |
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最後に、グループにわかれ、討議が行われました。
テーマは「3つのコミュニケーション」について。
学習療法を進めていく上での悩みや、質問などを発表し、意見交換を行いました。
【 討議で出た意見 】
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利用者へ対するあいづちが難しい → 教材以外のことで褒めてみる(いい声してるね〜など) |
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日報へ書くことが同じことばかりになる → 小さな“気づき”を大切に |
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利用者によっては、まったく学習が進められないことも → 場所、時間を変え、その人にあった方法を探すべき |
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学習療法のためのスペースの確保が問題 |
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日常業務で忙しく、時間が取れないことも |
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やっているときは楽しいが、結果が見えにくいため、継続が課題 |
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トップダウンで行うと難しい。いかに、スタッフがやりたい!と思えるよう、導入のための働きかけが必要 |
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学習療法を何のために導入したのか?意識の明確化が必要 |
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学習療法は、利用者の満足度の幅が広い。だから難しいし、やりがいもある |
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学習療法から得たもの。個別性や能力を引き出すこと |
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スタッフのコミュニケーション能力のアップを目指す必要がある ・・・など |
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今回の研究会には、「学習療法」についての知識を深めるとともに、職員の職員の活性化や地域のコミュニティをつくる…という意味も込められていました。
ほかの施設の事例を聞いたり、自分の施設で抱えている問題を発表することによって、次のステップへと進めたり、施設同士に結びつきが生まれるといううれしい効果も望めそうです。
終わりの挨拶にて、和光苑事務長重松さんより、
「私達の仕事は、3年後、5年後には旅立つかもしれない方に対して仕事をしている。私達の仕事は、映画おくりびとの仕事と同じ。そのために、自分達は何をすれば良いのか?を考え、悩み、取り組んでいくことが大切だ」
と、お話がありました。
「学習療法」は、自分たちが利用者のために何をすればよいのか、悩み、取り組むきっかけのひとつ。
よりよくしていくために、工夫し、スタッフや施設間で協力していくことが大切なのです。
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